名画で読み解く「ギリシア神話」(世界文化社)



吉田 敦彦 (監修)
オススメ度:★★★
子供たちに、他より一段深い星座の神話を話したい人にお勧めの本。世界の名画を解説しながら、モチーフとなった神話の解説をしてくれる一冊です。

この本に書いてあること

 黄道十二星座の神話はもちろんのこと、ペルセウス、ヘラクレスなど有名な星座の神話が網羅されています。また、ゼウス、ヘラ、ポセイドンといったオリュンポスの神々についての神話もあり、ギリシア神話全体の世界観も含めて知ることができます。見開き一ページで一枚の絵を解説しているので、オムニバス形式で気軽に読むことが出来ます。

この本の面白いところ

 挿絵が全て世界の名画であることに尽きます。名画を見るときのポイントや、名画に隠されたメッセージも解説されています。例えば、名画に描かれた神々は裸なため、誰が誰だか見分けがつきませんが、ワシが隣に描かれているのはゼウスで、孔雀が描かれているのはヘラで、など見分けるポイントがあるのだ、ということ。こういった「名画の見方」を知っていると、絵画を見るのが楽しくなりますね。

コレッジョ『ガニュメデスの略奪』(1531年–1532年頃) 美術史美術館所蔵

 ゼウスがガニュメデスをさらう瞬間を描いたこの有名な絵画は、みずがめ座の神話がモチーフです。よく見ると、ゼウスが化けたワシが、ガニュメデスの腕を舌で舐めて落ち着かせようとしているのだとか。どうしてゼウスがガニュメデスをさらったのか。息子をさらわれた後、両親はどうなったのかなど、詳しい神話についてももちろん解説されています。

この本を買う前に

 ふり仮名が全く振られていないので、小学生だと読むのに難儀すると思います。また、この本は神話の本であって星座の本ではないので、星図や星の配置などの理科的な要素は一切ありません。

この本で「科学する」

 星空の解説をするときには、星の配置や星座の並びなどのほかに、星座にまつわる神話についても解説すると大変喜ばれます。神話について書かれた本というと、星座によってお話を書いている人が異なって、統一感が取れていない事も多く、ちょっとした違和感を持ちながら読むことも多いものです(こっちの話ではオリオーンと書かれているのに、こちらの話ではオリオン、だったり)。この本は、私がこれまで読んだ本の中でもとりわけ全編通して筋が通った構成になっており、人に説明するときにも話しやすく非常におススメです。
 また、前述のように、名画を読むときの豆知識が書かれているため、この本では解説されていない名画を見るときに、この本で得た豆知識を活かすことが出来るという点で、発展性があることもおすすめのポイントです。

この本の商品リンク

2021年2月14日地球科学, 本レビュー